「ゴキブリ3:その種類 」
世界中に目を向けると4000種以上
の種類がいますが、そのほとんどは森にいて、体調10mmくらいの小さなものから、セミの様に大きなものまでいます。
ゴキブリは、もともと熱帯から温帯にかけての住人で、日本の場合、それほど昔から人間に関わり始めていた訳でもなさそうです。
文献に登場した中で最も古い(ゴキブリと思われる)記述は平安時代の「本草和名(ほんぞうわみょう)」(918年)による「あくたむし:ゴミをあさる虫」や「つのむし:長い触覚のある虫」でしょう。
下って江戸時代になると「訓蒙図彙(きんもうずい)1666年」の「あぶらむし」、「和漢三才図会(わかんさんさいずかい)」の「油虫」と「五器噛(ごきかぶり)」が定着してきていることが解ります。
五器(御器)とは、蓋付の椀のことで、「ごきかぶり」とは「五器をかじる虫」と言う意味です。ですから、標準和名は、正しくは「ごきかぶり」のはずなのですが、明治時代に岩川友太郎という人が「生物学語彙(1884年)」でふりがなを「ごきぶり」と誤記したものが広がってしまい、標準和名として正しい「ごきかぶり」は淘汰され、現在に至るのです。
ちなみに、「和漢三才図会(わかんさんさいずかい)」の「油虫」はチャバネゴキブリ、「五器噛(ごきかぶり)」は、クロゴキブリかヤマトゴキブリを指すのだと言われています。
ゴキブリ(害虫種)の主なもの
先に示しました通り、ゴキブリの種類は大変多いので、ここでは日本における害虫種の主なものを紹介致します。
■チャバネゴキブリ(チャバネゴキブリ亜科):
・体長11〜15mm、日本全国にいる黄褐色の小さなゴキブリで、屋内性の害虫です。
マンション、アパート、事務所等のコンクリート建造物から新幹線の中にまで住み着いています。
但し、本州・北海道で、暖房のない木造建築物では越冬出来ず、寒さの為に死に絶えたり、もっと暖かい建物に引っ越したりします。
かたや、九州以南では、年に二回以上の世代交代をくり返し、発育も良く大発生します。
■クロゴキブリ(ゴキブリ亜科)
・体長30〜40mm、最もよく見る、何処にでもいるゴキブリです。
黒くてツヤツヤした大型種で、本州中部以北にもいますが、やはり暖地に多くみられます。
成虫は200日前後生存し、その間に20〜30個の卵鞘(タマゴの入ったカプセル)を生みます。
長さ7〜8mmのササゲの豆粒かガマ口のような形状をした卵鞘の中には、約30個の卵が入っています。
雌はこの卵鞘を台所の物陰に産み落とし、唾液で周囲のゴミやホコリを擦り付けて目立たないようにするのです。
この卵、盛夏でも40日位ふ化しません。中には卵鞘のまま越冬し、ふ化するものもあります。
ふ化した幼虫は、脱皮に脱皮を重ね、7回目か8回目の脱皮のまま100日以上そのままで過ごし、1年近くになってやっと成虫になります。
■ヤマトゴキブリ(ゴキブリ亜科)
・体長25〜35mm、クロゴキブリと同じ仲間に属しますが、やや細身の体型で寒さに強い日本土着のゴキブリで、一族最高の環境適応力を誇ります。
卵鞘は赤みがかった黒褐色で、卵鞘ごとの卵数は20個以下と少ないのですが、矢張り、クロゴキブリと同じく一匹の雌が一生の間に生む卵鞘は20個以上です。
幼虫は、9回の脱皮で成虫になり、成熟してもその体色(濃茶褐色)は変化しません。
このゴキブリは、東北から裏日本、北陸、関東、近畿地方に分布し、南限は岡山、山口あたりです。
北日本地域の積雪地帯にも分布していて、世界的に最も北限に生息する特異なゴキブリであると言えます。
家住性種として分布地の農村で知られていますが、野外における生息性も強く、住宅付近の雑木林で樹液などを食料にして生活しています。
このような半野外性と温帯生息種の生理的特性から、活動期は4月から9月に集中、冬期は休眠状態で過ごすことが推測されています。
尚、寿命は長く、2回の越冬を経て3年生きるものがいます。
■ワモンゴキブリ(ゴキブリ亜科)
体長40〜48mm、害虫種最大で、体色は栗色、前胸背板には黄褐色の環状斑紋があるので「輪紋:ワモン」の名前が付けられました。
世界中に分布している熱帯系のゴキブリで、熱帯地方では野外にも生息しています。
日本では、九州南部より南西諸島、沖縄に分布し、これらの地域では優占的な害虫種です。
低温に弱く、20℃以下になると増殖はおろか食物も食べられなくなります。
にも関らず世界中に広がったのは、都市のビルなど暖房や空調設備が整った近代的社会環境の出現によるもので、実際、日本でも最近は本州などの大都市に生息例が多く見られるようになっています。
この他、温泉地や廃棄物処理場など、冬期でも局所的に保温条件の整う所なら生息可能です。
つまり、21世紀、地球温暖化で言われている平均気温2℃上昇が現実であるならば、このワモンゴキブリは爆発的に固体数を増やすことでしょう。
俗に「人類が滅びても、ゴキブリは生き残るだろう。」という台詞を聞いたことがあります。
今回紹介した害虫種の中では、チャバネゴキブリ・クロゴキブリ・ワモンゴキブリは、南方渡来種で寒さに弱い事、人類と共存する衛生害虫に成り下がってしまっている事から、少なくとも日本では、人類亡き後、運命を共にする事でしょう。
でも、日本に大昔から住んでいたヤマトゴキブリは、その先祖から受け継いで来た野外生息性を生かし、森林に帰って生き延びる事でしょう。
尤も、これも人類が森林を残して滅びた場合!に限定されますが…。
(参考文献:ゴキブリのはなし /安富和男編著/技報堂出版社)
(参考文献:害虫追い出し百科/西川勢津子、吉川翠 共著/近代文芸社)
YAMASA食品安全研究所
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