「朝ご飯給食」 食べずに登校、学校が現実策
(6/13)
朝ご飯を食べない子どもが増える中で、学校で「朝食」を出す動きが出始めている。「そこまで学校がするのか」という意見があるものの、「家庭に任せていても解決は難しい」と、現場では目の前のおなかをすかせた子どもへの対応に追われている。
1時間目が終わるチャイムが鳴った。岡山県美咲町の旭小学校。10分休みの間、給食ルームに児童たちが集まってきた。入り口に並ぶヨーグルトやチーズ、牛乳など10種類の中から、自分が食べたいものを選んで席に着く。「朝ご飯、食べてこなかった」「食べたけど、またおなかすいちゃった」。約8割の児童がおいしそうにヨーグルトなどを食べて教室に戻った。
●予算1200万円、過疎化も影響
美咲町が全小中学校で、朝食の補完として乳製品を出し始めたのは5月11日から。1200万円の予算を組んだ。町教委の調査によると、小中学生の2割が朝ご飯を食べてこない。おなかがすいて、勉強に集中できないという子も多く、どうしたらいいのか話し合う中で、「学校で朝食」という意見が出てきた。
欠食には、地域事情も影響しているようだ。過疎化で今年4月に小学校3校が統廃合し、学区域が広がった。スクールバスが回っているが、乗り場まで距離があり、午前6時台に家を出ないと間に合わない子も。ただ、藤井義久校長は「町がこんなことまでするのは、本来の姿ではない。家で朝食を食べなくてもいい、となったら本末転倒。朝食の大事さは繰り返し、親に伝えています」。
日本スポーツ振興センターの00年度の調査では、小学生の16%、中学生の20%が朝食を食べていない。
このため文部科学省は、今年度から「早寝早起き朝ご飯」運動を始め、ラジオ体操などで生活リズムを改善するための支援をする。しかし現場の学校では、目の前のふらふらの子どもたちに、直接的な対策を取らざるを得ない状況だ。
●生徒に内証、習慣づけ狙い
高知県香美市の鏡野中学校は、3年前から月1回、1時間目終了時の休み時間に、おにぎりとみそ汁とつけものを出す「朝食タイム」を実施している。「元気になり、授業中に寝ないですんだ」「きちんと朝食べるようにしようと思った」など生徒の評判は上々だ。狙いは「食べさせること」ではない。だからいつ実施するのかは、生徒には内証だ。学校での「抜き打ち朝食」を食べて重要性を実感し、家での朝食習慣をつけてもらいたいのだ。
同市教育支援センターの入野将佳所長によると「学校が家庭のことまでやる必要があるのか」という意見もあり、他校までは広がってはいない。ただ、これをきっかけに、家庭の実態に目を向け「少しでも親の意識を変えていこう」との声も強まってきたという。
香美市では、栄養教諭が朝食の重要性を伝える取り組みもしている。栄養教諭とは、教諭、養護教諭以外の「第3の先生」として05年度に誕生、26道府県におり、特別授業で食生活を指導するほか、給食の献立作成、食物アレルギーの子どもへの個別指導もする。
同市の北村和子栄養教諭は朝食の調理実習などを指導。市立楠目小学校ではご飯、みそ汁、野菜入りいり卵などを作った。「自分で作ったものは、焦げてもしょっぱくても喜んで食べる」と北村教諭。夏休みには家族のために朝ご飯を作る宿題を出した。
●養護教諭がおにぎり用意
東京都八王子市の私立穎明館中学・高校は、01年から食堂で朝ご飯を出している。トーストやサラダ、飲み物のモーニングセットが200円で、毎日約20人が利用する。あきる野市の東海大菅生中学では、1時間目終了後を軽食タイムとして、持ってきた弁当やパンを食べてもよいことにするなど、現場は様々な試みが続いている。
養護教諭を30年以上続けてきた宍戸洲美・帝京短期大教授(62)によると、朝ご飯を食べてこない子は、3時間目ぐらいに「気持ちが悪い」と保健室に来ることが多く、給食の残りをおにぎりにして冷凍しておき、温めて出していた。「そうしている学校は多い。おにぎりを食べさせながら、家の話を聞いてあげられるし。朝ご飯には家庭の問題が端的に表れます。親を丁寧に指導しながら家族が変わることにつなげたい」
また、女子栄養大の足立己幸名誉教授は「朝食を学校で補完するより、家庭の努力を促してもらいたい」と話す一方で、「でも、作らない親に言ってもなかなか変わらないのが現実。だったら、子ども自身で朝食を作る力を育てるよう、発想の転換も必要な時代ではないか。小学校低学年でもご飯の準備はできる。親が変わるのを待つより、子どもを変える方が早いかもしれない」と話している。
(朝日新聞)
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