根菜を味わう なじみの大根、珍種のニンジン…
(11/09)
◇土が育てたうまさの結晶
おでんの大根、シチューや豚汁にたっぷり入ったニンジンやジャガイモなどが恋しい季節になってきた。土の中で育つ根菜類は、大地の恵みらしい独特の味わいと存在感がある。おなじみの種類のほかに、最近は珍しい品種もいろいろ出回っているようだ。【本橋由紀】
●野菜のソムリエ
根菜の代表格ともいえるニンジンといえば濃いオレンジ色を連想するが、スーパーの店頭には赤い金時ニンジンや黄色いニンジンも並んでいる。日本ベジタブル&フルーツマイスター協会のジュニアマイスターの資格を持つ「野菜のソムリエ」、米村佳奈子さん(23)に聞くと、「ニンジンはアフガニスタン原産。ヨーロッパに広まった太くて短いニンジンと、アジアに広まった細長いニンジンがあります」と教えてくれた。「体内でビタミンAに変わるカロチンが豊富なのはヨーロッパ型。金時ニンジンはアジア型で、赤い色はカロチンではなくトマトと同じ抗酸化物質のリコピンが多いため。皮に近い部分に栄養が多いので皮ごと調理してください」
黄色いニンジンはヨーロッパ型のものもあるが、沖縄の「島ニンジン」も知られてきた。沖縄県農業協同組合中部地区営農センターの職員、大城孝嗣さん(32)は「県中央部で作られ、2月まで出荷します。生産量が少なく値段も高いですが、ほとんどは県内消費。みそ汁に入れたり炒め物にして食べます」と話す。
ヨーロッパで食べられているパースニップという白いニンジンもある。
こうした珍しい根菜でも、最近はスーパーやデパートに並んだり、インターネット販売で手に入るものが増えている。「面白いのは奈良県で作られてきた野川芋(のがわいも)。水気がなくなるまで炊き込んだものは固くなって中に空洞ができ、食べるとパチッと音がするのでパチ芋と呼ばれます。イタリア野菜の黒丸大根は表皮が黒い大根で、ビタミンCや鉄分が豊富。セロリの仲間で、かぶのような形の根を食べるセルリアックという洋野菜も人気があります」と米村さん。
根菜はビタミンやミネラル、食物繊維が豊富。血行を良くして体を温め、新陳代謝を促す薬効がある。寒くなるこれからの季節の健康を支えてくれるわけだ。漢方の生薬にも根菜を乾燥させたものが多い。
●加賀の味
東京都中央卸売市場の大田市場にある青果卸の最大手「東京青果」にも聞いてみた。台風の大きな被害を受けた昨年と違い、今年は今のところ野菜全般の入荷状況は順調で、価格も平年並みという。
個性園芸事業部の営業担当、村松寿夫さんは、このところ人気を集めている加賀野菜を勧める。かつては京都や大阪で流通していたが、最近は関東周辺などにも出回っているという。「源助大根はずんぐりした円筒形で、長さは普通の大根の半分くらい。煮くずれしにくく、煮るととろみがあってやわらかい。加賀レンコンは肉厚で、煮物にするとお芋みたいにねっとりしてこれも格別。これからが最盛期です。五郎島金時というサツマ芋は焼き芋やふかし芋に最高。独特の食感があります」
●土づくり
根菜づくりの秘けつは何だろう。「日本一日照時間の長い町」といわれる山梨県北杜(ほくと)市明野(あけの)町に「根菜名人」がいると聞いて出かけた。
「名人かどうかは知らんけど、葉物や果樹は性に合わないんですよ。見える部分が多いとついちょっかいを出して、余計な液肥を与えたりしちゃってね」と笑う篠原大(はじめ)さん(49)。得意とするのは大根、ジャガイモ、タマネギ……である。
篠原さんが最も重視するのは土づくり。それは区画ごとにさまざまな表情を見せる畑に表れている。青々とした葉の茂る大根畑、ジャガ芋を収穫した後、成長の早いライ麦をまいたばかりという畑、ライ麦が少し育って3センチほどに伸びている畑もある。「こっちの畑は極早生のジャガ芋を収穫せずにそのままにしてある。霜に当たるとたい肥になるんです。ここにもみ殻をまぜてライ麦をまき、緑肥としてすき込みます」
篠原さんによると、明野町の土質は火山灰土からなる重粘土質で、肥料の成分が動きにくい。この土を何度もすき込むことで土の間に空間を作り、肥料の成分を動きやすくすれば野菜の甘みを引き出せるという。
最盛期の大根は「有名な三浦大根よりもおいしいものを」を念頭に育てている。つやと甘みを出すために、牛ふんや鶏ふんなどの有機物をバランスよく使い、緑肥をすき込んだ土を使う。土にチッソ成分が多いと大根に苦みやえぐみが出るので抑える。また、同じ畑で同じ野菜ばかり作ると、大根に黒い巣が出る「連作障害」を起こすため、畑は順番に使い回すという。
土づくりに手間ひまをかけることで農薬や化学肥料の量を通常の3割減に抑え、近く県の野菜ブランド「甲斐のこだわり」の認証を受ける予定の篠原さんの大根。
では、名人のお勧めの大根のメニューは?
「刻んだ大根の葉っぱと千切り大根、シーチキンをまぜてしょうゆをたらしたり、輪切りにして七輪の炭火で焼いた大根にだし汁でといたみそをぬって田楽風に食べるとおいしいもんだよ」
さっそくお試しあれ。
(毎日新聞)
このページの先頭に戻る