ヘルシーリポート:むし歯は感染症、親子でケアを 原因菌減らせ、卵黄抗体食品活用も
(11/24)
子どもの歯はエナメル質が弱く、むし歯になりやすい。特に乳歯の手入れをおろそかにすると、その後の歯並びや、かみ合わせにも悪影響を及ぼす可能性がある。卵黄を活用した「バイオ抗体食品」がむし歯の原因となるミュータンス菌を減らすことが分かってきた。子どもの歯を守るには、子どもだけでなく、親の歯のケアも必要なことを知っておきたい。
生まれたばかりの子どもの口には、むし歯の原因となるミュータンス菌はいない。1歳半から2歳半ごろにかけて、大人から感染して、乳幼児もミュータンス菌をもつようになる。
母が赤ちゃんに口移しで食べ物を与えたり、同じスプーンを使って食べたりするうちに、唾液(だえき)を通じてミュータンス菌が子どもの口に移り、すみつくようになるといわれている。むし歯は感染症の一種なのである。
「乳歯がむし歯になっても、どうせ生え変わるから大丈夫」と思っている親もいるようだが、「これは大きな間違いです」と、北海道医療大学歯学部(北海道当別町)口腔(こうくう)衛生学講座の千葉逸朗教授は話す。
◆親の意識が大切
祖父母が乳幼児に甘いものを与え過ぎると、むし歯が多くなりがちだ。歯科健診でむし歯が多いと思ったら、虐待されていたというケースさえある。乳歯のむし歯で歯が健全に育たないと、その下から出てくる永久歯がきっちりと生えず、あごが丈夫に発達しなかったり、歯並びが悪くなったりする。千葉さんは「乳幼児の歯は、親がしっかりと守ってあげる意識が必要です」と強調する。
◆むし歯のでき方
親としては、どうやってむし歯ができるかを知っておくことも必要だ。
むし歯の原因となるミュータンス菌は、主に口の中の糖分を栄養源にして、ネバネバ成分(グルカンといい、不溶性の多糖体)や酸(主に乳酸)をつくる。このネバネバが歯に付着すると、やがて歯垢(しこう)と呼ばれるプラークができる。そのプラークの中でミュータンス菌は増え続け、歯を溶かしていく。
ミュータンス菌が増えて酸がたまると、一見丈夫そうなエナメル質も、徐々に溶け始める。これがむし歯の始まりだ。千葉さんは「ミュータンス菌が増えるのを抑えたり、歯に付着するのを防げば、むし歯の予防になります」と話す。
そこで、乳幼児期の歯を守るには(1)毎日、子どもが自分で歯磨きをする(2)子どもだけでは磨き不足が生じるため、親が仕上げ磨きをする(3)甘いおやつは時間を決めて与え、だらだらと与えない−−という三つの原則の実行が基本になる。
◇原因菌減らせ−−卵黄抗体食品活用も
◆ドロップ状に製品化
そうはいっても、子どもの歯は弱い。ミュータンス菌を減らす卵黄抗体食品を補助的に活用するのも方法のひとつだ。
種鶏業のゲン・コーポレーション(岐阜市)は鶏の免疫力を利用し、オーバルゲンDCという卵黄抗体を開発した。ミュータンス菌がもつ酵素を鶏に投与すると、この酵素に対する抗体が体内にできる。その抗体が卵黄に濃縮されることが分かり、この卵黄を乾燥、粉末化したものをドロップ状の食品に製品化した。オーバルゲンDCがミュータンス菌をつかまえネバネバのグルカンをつくりにくくするのだ。
千葉さんらは人工的につくった歯の表面にオーバルゲンDCとミュータンス菌を同時に与えると、ミュータンス菌が歯に付着しないことを確かめた。
さらにボランティアの成人99人の協力を得て、この卵黄抗体食品の効果を調査。1日5回・5日間、オーバルゲンDCを含むタブレットをなめてもらい、本物に似せたタブレット(プラセボ)をなめたグループと比べた。
その結果、唾液に含まれるミュータンス菌の数は、オーバルゲンDCを摂取したグループで激減した。オーバルゲンDCの摂取で歯がつるつるした状態になり、歯を磨いた状態が持続していた。実験にかかわった同大口腔衛生学講座の磯貝恵美子さんは「個人差はあったが、もともとミュータンス菌の多かった人ほど大きく減りました」と効果に驚く。
乳幼児でも、この抗体食品をなめれば、ミュータンス菌が減る。ただ、子どもの口の中のミュータンス菌が減っても、子育て中の親の口にミュータンス菌が多ければ、効果は半減してしまう。親もトローチをなめた方がより効果的といえる。
千葉さんは「子どもが3歳になるまでは、親子でミュータンス菌を減らす生活習慣を身につけることが大切です」と乳歯の段階で歯を守ることの重要性を指摘する。
健全な永久歯は健全な乳歯に宿る−−ということか。
(毎日新聞)
このページの先頭に戻る