糖尿病予防走る自治体(10/05)
ヘルシー外食指南、夕方に健康相談…
網膜症、腎症などの合併症を招き、「病気のデパート」とも言われる糖尿病。住民の健康を守ろうと、重点的な予防活動に取り組む自治体が増えている。医療費抑制への期待も大きい。(阿部文彦)
■成分表示
「坊っちゃん」で知られる人口約51万人の松山市。市中心部にあるイタリアンレストラン「ラ・セーラ」の定番メニューは、若鶏のオーブン焼きバルサミコソースと、カルシウムや野菜たっぷりのラザーニャだ。
メニューを見ると、エネルギー(カロリー)のほか、脂質、食塩相当量が記されている。テーブルでは、「私のラザーニャの方がカロリーが高いのね。きょうは夕食の量を控えないと」といった会話が弾む。
同店が、栄養成分を表示したメニューを出し始めたのは2002年から。松山市の「ヘルシーメニュー協力店」に応募したのだ。外食をしたり、お総菜を買う人が増えていることから、同市では、「糖尿病を含め、高脂血症、高血圧症など生活習慣病対策には、家庭外での栄養管理が欠かせない」(同市保健所)として、協力店の募集を手始めに、外食産業の活用方法、糖尿病予防対策などの講習会を精力的に催してきた。
「ラ・セーラ」のオーナーシェフ亀井幸雄さん(49)の義父も糖尿病患者だ。食事療法が欠かせず、「カロリーオーバーが怖くて、外食をしづらい」とよく愚痴をこぼした。皮の脂分を落とし、体に良いポリフェノールを含むバルサミコソースを使った若鶏オーブン焼きは、義父に作った特製料理が原型という。「カロリーなどを明記すれば、糖尿病の人も安心して注文できる」と話す。
■啓発様々
富山県滑川市は昨年度から、会社員を対象にした「糖尿病イブニング健康相談」を開催、地域ぐるみの対策を推進している。
市町村の国民健康保険を束ねる国保中央会も7月、保健師や行政担当者向けの「糖尿病予防活動の手引き」をまとめた。「専門知識に基づき、正常な人や予備群を含め、それぞれの段階で糖尿病の進行を食い止めたい」と、同会の田中一哉審議役は説明する。
このほか、日本医師会などが、「糖尿病対策推進会議」を設置。日本歯科医師会は、「重度の歯周病を持つ人は糖尿病を悪化させやすい」として、啓発活動に取り組んでいる。
■重症化前に
糖尿病対策を強化する背景にあるのが、年間約1兆円の増加を見せる医療費の問題だ。糖尿病と予備群の数は1620万人で、医療費は1兆1250億円(2002年)。糖尿病による人工透析の費用などを加えると、2兆円と言われる。
高齢者増に伴い、糖尿病の医療費はさらにふくらむ。「健康維持が第一の目的だが、増大する医療費の伸びを抑制する効果も期待できる」と田中審議役は話す。厚生労働省も、糖尿病を中心にした生活習慣病対策で、2025年には2・8兆円の抑制が可能と見込む。
立命館大経済学部の柿原浩明教授(医療経済学)は、糖尿病を45歳で発症した患者で、発症後10年間放置したケースと、すぐに治療するケースの医療費を試算した。前者は初期の治療費こそかからないものの、重症化する。このため、すぐに治療した方が、医療費を1000万円節約できる上に、寿命も7年延びる。
実際には、治療を受けていない患者に年間1兆円以上の医療費が必要となるため、短期的には抑制効果が数字に出にくい。だが、同時に予防の徹底に取り組んだ場合、「重い患者が増えることでの社会的な損失、合併症の医療費などを考慮すると、かなりの抑制効果を期待できる」と柿原さんは指摘している。
◎国保中央会の糖尿病予防活動の手引きは、生活習慣改善の評価項目に、〈1〉食生活(食事の規則正しさ、油もの、塩分、野菜の摂取状況)〈2〉運動状況(意識的な運動の有無、1日30分以上の運動を週3回以上実施)〈3〉そのほか(喫煙の状況、睡眠の状況)――を挙げている。
(読売新聞)
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