【中国】揺らぐ外国ブランド神話、食品不信続く
(6/20)
スイスの食品大手・ネスレの粉ミルクに含まれるヨード量が国家基準を超えていたとして、地元メディアは連日その経緯を報道、「ネスレ」ブランドのイメージダウンは避けられない情況となっている。内販市場の拡大により参入が相次ぐ外資食品企業だが、品質管理を一歩誤ればメディアや消費者から総攻撃を受けることを示唆している。背景には、中国人の権利意識向上や外資企業の消費者向け対応策の欠如などがあり、問題は複雑な要素を含んでいるようだ。【北京・新田理恵】
今回問題とされた粉ミルクは、ネスレが黒竜江省に設立した合弁会社・双城雀巣有限公司が生産した「金牌成長3+」という乳幼児向け商品。中国の品質基準では、粉ミルク100グラム当たりのヨード含有量は30〜150マイクログラムと定められているのに対し、同商品からは191〜198マイクログラムが検出された。
ヨードの過剰摂取は、欠乏した場合と同様、甲状腺の異常を引き起こすとされている。
これに対し、ネスレ側は当初「国際基準はクリアしている」と主張。さらにヨード含有量の超過は原料となる牛乳の成分の変動によるものだと弁明したほか、「1日当たりの摂取量を800マイクログラムに抑えれば健康に害は無い」とあくまで同商品の安全性を強調した。実際に問題の商品による健康被害は報告されていないものの、安全性を主張することで謝罪表明が後手にまわり、一層消費者のひんしゅくを買う結果となった。
16日付中国経済時報によると、中国の粉ミルク市場は50億元。毎年2けた成長を続けており、米国に次ぐ世界第2の規模にまで成長している。その粉ミルクの品質が原因で、中国では昨年、乳児が発病、死に至るケースが続出。人々に大きな衝撃を与えたことも、今回のネスレの問題への関心を高めたと言える。
一連のネスレの対応について、一部地元メディアは「ごう慢だ」と批難。消費者の外国ブランドに対する信頼を盾にした「背信行為」と切り捨てるなど、中国人の中に根強い外国ブランド「崇拝」を疑問視する論調が強まっている。また、民族ブランドの価値見直しを訴える意見も出ており、外国ブランド食品への信頼が揺らいでいる。
今回ネスレは国際基準を安全性の根拠の一つとしたが、日中通商関係者は「やはり現地の基準に則るべき」と指摘。一方、世界貿易機関(WTO)加盟によって中国の国際法規への加入が進んでいることから、採用する基準にどれだけ拘束力があるかなどを考慮する必要があるとしている。
■「最も受け入れ難い」二重基準への疑惑
今年3月には、米食品メーカー・ハインツの唐辛子味噌から発がん性着色料「スーダンレッド1」が検出されたとして、大きな話題となった。その後、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の2つのメニューにこの着色料が使用されていることが明らかとなり、この商品の一時販売中止を余儀なくされている。
さらに同月、米国で英蘭系食品・日用品大手ユニリーバのリプトン・インスタント紅茶に含まれるフッ素化合物が基準を大きく超えているとの研究リポートが発表されたと、中国でも大きく報道された。結局、中国で販売されている製品には問題がないと結論付けられたが、中国人の間で外国ブランドの品質に対する不安が広がったのは事実のようだ。
このような事態について、商務部の多国籍企業研究部門の関係者は「中国市場での発展を考えるなら、多国籍企業はダブルスタンダードを捨て、中国の社会発展と環境保護にも責任を負うべき」と述べ、一部多国籍企業が中国向けには品質の劣る製品をまわすなど、先進国向けとは異なる基準を採用している可能性を示唆した。
専門家らも、昨今外国ブランド食品の品質問題が取りだたされる背景には、(1)中国の食品管理部門と消費者の品質に対する意識の向上(2)多国籍企業の品質監督部門によるダブルスタンダードの採用――の2点があると指摘。ダブルスタンダードにみられるような中国市場に対する軽視は、「中国の消費者が最も受け入れ難い態度」としている。
■消費者クレーム19%増、意識の変化明確に
北京市を例にとると、同市消費者協会が2004年に受理したクレームは2万1,732件に上り、前年に比べ19.1%増加した。食品に限らず、消費者の品質に対する意識の向上を表す数字と言える。商務部によると、こと食品については一類食品(主に主食を指す)への消費者の信頼度が50%を下回るというデータもある。食品は消費者にとって最も身近な商品だけに、これまで「外資=高品質」と捉えられてきた外国ブランド食品の品質問題は消費者に大きな衝撃を与え、過剰ともとれる反応を引き起こしたとみられる。
日中通商関係者は「以前は外国ブランドの食品と言えば輸入物が中心だったが、小売分野の開放も追い風となり、巨大市場を狙って内販拡大を図る外資メーカーがどんどん進出してくるだろう」と予測。中国の関連部門も品質基準の整備を進め、法律を強化してくるのは確実で、社内基準が特に厳格だと言われる日系企業にとっても、より一層の品質管理が求められるのは間違いなさそうだ。
(NNA)
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