'05記者リポート:小中学校に栄養教諭、福井で制度スタート /福井
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◇家庭の食環境改革目指す−−マナーから朝食の採り方まで、多岐にわたる指導
食育(食の教育)がいま、教育の現場でクローズアップされている。急増する子どもたちの肥満やアレルギー体質を、食の乱れを正すことから歯止めをかけようという発想だ。全国の小中学校に配置される栄養士だけでは指導に限界があり、文部科学省は食育を職務として位置付けた栄養教諭を今年4月から制度化した。福井県教委は制度を積極的に取り入れ、10人を専任させて県内の小中学校に配置した。「子どもたちをどう指導するのか」−−。そのスタートを追った。【佐藤孝治】
■はしの使い方
福井市郊外にある市立「和田小学校」(西野肇児校長、児童716人)。「はーい。今日はおはしの使い方を習いますよ」。1年2組のクラスに、栄養教諭の青山幸子さん(52)の声が響いた。今月18日。4時限目は学級活動で「食事のマナー」がテーマだった。「ちゃんと出来ますか」。児童39人全員が手を挙げ自信満々で臨んだが、「動かす方のおはしは親指と人さし指、中指で鉛筆を持つようにしてね」という指導を受けながら、小さな手が悪戦苦闘していた。
同校の給食は、全員が“マイはし”を家庭から持参する。使い慣れたはしで早速、児童の1人が食べ始めたが、習ったばかりの使い方をすっかり忘れている。食事を共にした私が「あれ、おかしいな」と指摘すると、「ちょっとしたら変になっちゃう。頑張って直すから」と屈託のない笑顔を見せた。
■やりがい
栄養教諭の仕事は、学校給食を主体に食事のマナーから、朝食やおやつの食べ方などの栄養指導に至るまで多岐にわたる。これまで給食の栄養指導に当たっていた栄養士では難しい児童生徒の食生活に関する個別指導にまで踏み込め、責任の重度は飛躍的に増した。
青山教諭は和田小学校以外にもう1校を掛け持ちする。興味ある調査結果を教えてもらった。家庭科の授業で、小学6年生に「休日の朝ごはん」の献立を考えてもらう。事前に栄養指導したクラスは、全員がバランスの取れた食事を提案したが、何も教えなかったクラスは「ご飯と目玉焼き、ハムエッグ、みそ汁」などと偏った献立が多かった。当然と言えば当然だが、児童を通して家庭での食環境が垣間見える。一方で、青山教諭は「指導してこれだけ変わるのだから、やりがいはありますよ」と確かな手応えをつかんでいるようだ。
■高い関心
栄養教諭を採用したのは、全国で福井県10人、高知県5人、国立長崎大学付属小学校1人。福井県が突出している。「福井元気宣言」を政策のスローガンにする西川一誠知事の意向が強く反映されているという。とはいえ、国会では議員立法の「食育基本法」が審議されるなど、食への関心がかつてなく盛りあがっている。福井県の栄養教諭を管轄する県教委スポーツ保健課には、連日のように、全国の教育関係者から同教諭の選考方法や実際の職務状況などの問い合わせが寄せられている。
文科省の外郭団体「日本スポーツ振興センター」が調査した00年度食生活等実態調査によると、朝食を食べていない児童生徒は全体のわずか6・7%。しかし、同課は「朝食の内容が問題。多くが菓子パンやチョコレートなどを食べただけ」と指摘する。また、「食事のしつけなどは、本来は家庭で学ぶもの。出来ていないということは、それだけ児童生徒を取り巻く食環境が乱れている証拠だ」とも話す。
栄養教諭は、食を学ぶ家庭科の授業や総合学習の時間はもとより、「安全な食材」という観点から、社会科などの授業にも出向き、指導することができる。青山教諭は、児童生徒が学校で習ったことを家庭で積極的に話してくれることを願う。「子どもの意識が変わったら、親としても正さない訳にはいかないでしょ。そのためにこれから、いろいろと工夫したい」という。狙いは“家庭の食環境の改革”。目標は大きい。
(毎日新聞)
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