特集:毎日・地方自治大賞 最優秀賞・愛媛県今治市「安全な『食』による街づくり」
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◆応募論文「安全な『食』による街づくり」(要旨)
◇「地産地消」「食の安全」−−20年以上の取り組み
地域独自の優れた事業や活動に取り組んでいる市区町村を顕彰する「2004年度毎日・地方自治大賞」で最優秀賞に輝いた今治市。BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザの発生など食への不安が高まる中、安全な地元産の食材を積極的に消費する「地産地消」に20年以上も前から取り組んだ実績が高く評価された。同市の応募論文「安全な『食』による街づくり」(要旨)を紹介する。【小林祥晃】
◇今治市の学校給食−−自校式で地元食材を導入
今治市は、20年前から食の安全を第一に考えた「地産地消」に取り組んでいる。単なる「地域内生産、地域内消費」だけではなく、健康増進や農業振興、地域経済の活性化につなげる取り組みで、それを象徴するのが学校給食である。
今治市は83年から、老朽化した大規模給食センターを自校式調理場へと切り替え始めた。現在は市内13カ所の調理場で、1日約1万食を供給している。
また同年度から、食材に地元産農産物を優先的に使用。特に立花地区の3調理場で作る約1700食分については有機農産物を導入した。現在、有機農産物の導入率は重量比で約60%になっている。
これらは、当時の消費者グループと有機栽培農家などが、熱心に住民運動を行った結果である。「子や孫に自分たちの作った安全で新鮮な食材を食べさせたい」という損得抜きの思いが、取り組み推進の大きな力になった。
使っている有機農産物は野菜だけではない。農薬・化学肥料を50%以上削減した今治産の特別栽培米、地元産小麦100%で製造したパン、地元産の大豆で作った豆腐なども使用している。
◇「食の安全」を決議−−安定供給体制の確立へ
もう一つ特徴的なのが、88年3月に市議会で決議した「食糧の安全性と安定供給体制を確立する都市宣言」だ。
当時は「農産物の残留農薬」「自給率の低下」「諸外国からの市場開放要求」などへの不安が高まり始めた時期で、安全な食べ物の生産と消費拡大を進めようと議員発議で議決された。有機農業の技術普及や消費者の理解を求めるなど、その内容は現在も色あせていない。
これ以来、給食を通して食や農業への理解を深め、地域農業の振興や健康な街づくりへと発展させる取り組みが本格化した。
◇まちづくりへの発展−−無農薬野菜作りで講習
98年、市は学校給食で培った知識やノウハウを生かし、安全な食べ物で健康な食生活を送る街づくり戦略を打ち出した。給食にとどまらず、公共施設や外食、一般家庭までを視野に入れ、各種事業を開始した。
まず、安全な食べ物の生産者育成を目指し、「市実践農業講座」を開設。農薬や化学肥料を使わない野菜づくりの講習を始めた。また「地元産有機農産物等普及推進事業」を創設し、生産者向け支援メニューを整えた。
また、農薬や化学肥料を使わないことが利用条件の「いまばり市民農園」を設置し、安全な食べ物を生産する難しさや農家の苦労を、一般の市民にも体験してもらっている。
市内の4小学校には、有機農産物のJAS(日本農林規格)認証の取得にチャレンジする学校農園を設置。規格に基づいた有機農園を運営し、設置から2年後の03年12月に認証を取得した。
01年からは、県の委託を受けて「地域食材活用学校給食モデル事業」を実施した。子供たちによる「アイデア献立コンクール」▽地元食材を活用した献立や子供の嫌いな野菜を使った献立の開発▽「校区内生産、校区内消費」を目指す学校給食懇談会の開催▽冊子「これぞ!いまばりの学校給食」「レシピ集」の発刊−−などに取り組んだ。また地産地消給食が教育効果を持つのかどうかを検証するアンケート調査も行った。
この間に、地産地消の動きは行政の外にも広がり始めた。01年には実践農業講座の修了生が「学校給食無農薬野菜生産研究会」を結成し、給食用食材の供給を開始した。地元農協は徹底的に地元産にこだわる直売所をオープンし、現在も多くの市民が利用している。
また給食と同じ特別栽培米を使った純米酒、幼稚園や生協向けに県内産小麦を使った菓子パンなども発売されるようになった。
◇いまばり地産地消推進運動−−基準設けて「協力店」募集
03年、市は農林水産課に「地産地消推進室」を設置。また各界のメンバーによる「いまばり地産地消推進会議」を立ち上げ、全市的な運動への発展を目指した。
推進会議の取り組みの一つは「地産地消推進協力店」の認証。地元の安全な農林水産物を販売する小売り店▽地元食材を使った料理を出す飲食店▽地元食材が原料の加工食品を製造する製造業者−−を募集。一定の基準を設けて「協力店」を認証し、ロゴマークや販売促進用ののぼりなどを交付している。
二つ目は、地元の食材を購入し食べようという市民の「サポーター」登録。サポーターには、認証店情報や旬の食材情報などを伝える「食のメール」をファクスやパソコン、携帯電話などで配信する。
また認証店やサポーターが持ち込んだ食品について、残留農薬や遺伝子組み換えの有無を無料で分析している。
◇食育の充実へ−−総合学習でモデル授業
今後は市民全体が食を選択する力を養い、生活習慣病の予防や健康的な生活を実践することが望まれる。それには「食育」が重要だ。
昨年11月、市立鳥生小4年生を対象に、総合学習の時間を利用して「食育モデル授業」を実施した。最初の授業では「10年後の夕食」とのテーマで絵を描いてもらう。すると「好きだから」「食べたいから」という理由で、多くの子どもたちがカレーやハンバーグの絵を描いた。
その後、6コマ10時間の授業で、生活習慣病の知識や買い物をする技、野菜を食べる技、調理をする技を身に着けさせ、理想の食事について学んだ。授業の後、再び食事の絵を描いてもらうと「体に良いから」と、ごはん、みそ汁、焼き魚、おひたしの献立を描く子が増えた。子どもたちは、わずか10時間で食を変革する技を身に着けた。
食育に目を向けた時、改めて地産地消の価値が見直される。それは食育教材として、地元産の安全な食材や地域の伝統食、郷土料理が不可欠だからだ。食育の充実は、地産地消の後押しをしていくに違いない。(毎日新聞)
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