WHO健康フォーラム2004 生活習慣病から、わが身を守ろう(12/18)
日本は世界一の長寿国になったが、寝たきりや痴呆にならずに天寿を全うする“健康寿命”という点では、まだまだ課題が多い。健康寿命を延ばすには生活習慣病の予防が重要だが、その知識を紹介する「WHO健康フォーラム2004−生活習慣病から身を守るために〜予防医学の見地から」(毎日新聞社主催、日本WHO協会関西支部共催)がこのほど、大阪市北区の毎日新聞オーバルホールで開催された。田口寛・三重大学教授による「生活習慣病対策〜まず予防、次に早期発見と早期治療」と村田晃・佐賀短期大学教授による「ビタミンCと健康」の二つの講演のあと、会場からの質問をもとに、座長の南一雄・日本WHO協会理事と両教授を交えたパネルディスカッションが行われ、会場を埋めた約480人の聴衆は熱心に聴き入っていた。
◆三重大学生物資源学部教授・田口寛氏
◇まず予防、次に早期発見・治療 「腹七分目」、ストレスためず
「健康がすべてではない。しかし健康がなければすべてはない」というのが私のモットーです。理想の死に方は、「GNP」です。これは「元気、長生き、ぽっくり」のことです。人間の限界(最大)寿命は約115歳です。日本人は世界一長生きですが、限界寿命にはまだ遠く及びません。
日本人の死亡原因のダントツ1位はがんです。年間30万人以上が、がんで亡くなり、しかもその数は年々上昇しています。がんがやっかいなのは、自覚症状が出たときは手遅れのことが多い“サイレントデビル”であること、原因が無数にあること、転移することです。
発がん要因には内的、外的要因があります。内的要因は遺伝子、体質などがあり、外的要因には各種発がん物質、放射線、ウイルスなどがあります。発がん物質の35%は食事から、30%はたばこにあります。たばこが悪いのはがん抑制遺伝子に損傷を与えるなどするためです。人間の体には約60兆個の細胞があります。その各細胞中にあるDNAに傷がつくと、PARPという“ガードマン”酵素がまず関与して、巧妙な仕組みで修復しますが、それがうまくいかず、アポトーシスも働かないと、がん細胞が増殖し続け、20回の増殖で約1ミリグラム、30回で約1グラムで大豆大になります。がんの最初の原因は20年前、30年前につくられ、その後は人間の体の中には常にがん細胞が存在し、増殖し続けています。診断可能な大きさになるまで、単にそれが見つからないだけです。
それだけに、がんには早期発見、早期治療が非常に大切です。生活習慣病のための健康対策は中高年になってからでは実は遅いのです。子供のころから始めることが必要です。食事など母親の知識が大事だといえます。
がん予防にはたばこを吸わないなど発がん要因の回避と予防効果のある食品の摂取が効果的です。食品成分ではとくにビタミンのA(カロテン)、C、E、それにニコチン酸、食物繊維などが予防効果が高い。ニコチン酸は、コーヒー、ピーナツ、きのこ類などに特に多く含まれています。がん予防には、一般的に色の濃い野菜、果物が効果的です。トマトでも熟して赤くなったものがいいのです。
がんの発生には酸化物質(活性酸素種)が関係しているので、その予防には抗酸化物質の摂取が効果があります。私の研究室で、300種類以上の食品の抗酸化能を測定したところ、日本茶、コーヒー、紫いもがトップ3でした。日本茶を1日7杯以上飲むと、胃がん予防になるとか、コーヒーを1日3杯以上飲むと大腸がんの予防効果があるともいわれています。インスタントコーヒーでも同様の効果が認められます。
食べすぎもいけません。腹八分目といいますが、腹七分目くらいがベターです。カロリーをとりすぎると長寿遺伝子の発現が抑制されます。
そしてストレスをためないことも大切です。ストレスは交感神経が優位になる結果、リンパ球のナチュラルキラー細胞を減少させ、免疫機能を低下させます。趣味や旅行、「笑い」などストレス解消に努めてほしいと思います。音楽によるヒーリング、ペットによるアニマルセラピーなども良いでしょう。
適度な運動も必要ですが、激しい運動は酸素を過剰に取り入れる結果、体内で酸化物質を増やし、マイナス効果をもたらします。
皮膚がんや乳がんは自分で発見することも可能ですが、多くのがんは早期発見がなかなか難しいです。腫瘍(しゅよう)マーカーの検査やPET(陽電子放射断層撮影装置)検査も完ぺきではありません。がんにならないようにする生活習慣が何より大切です。
◆佐賀短期大学食物栄養学科教授・村田晃氏
◇ビタミンCで免疫力アップを 野菜・果物不足には補助剤も
ビタミンCはがんやかぜの予防に効果があるといわれています。食物からどのくらいとればいいのかの目安として厚生労働省の栄養所要量があります。
2000年に改定された栄養所要量では、ビタミンCは1日100ミリグラムになっています。実はその5年前の改定では50ミリグラムとなっていて、これは25年間同じ値でした。それが2倍に増量されたのは画期的なことで、それだけビタミンCの重要性が認識されたことになります。
予防医学の面から、生活習慣病の予防効果のあるビタミンCの栄養所要量を上げようという動きは世界的なものであり、日本は米国に先駆けて改定しました。米国も日本に追随して60ミリグラムから90ミリグラムに改定しました。
ビタミンCは食物から摂取するのが理想であり基本です。野菜、果実類をしっかり食べることは大切です。最新の国民栄養調査によると、日本人は1日101ミリグラムのビタミンCをとっていることになっていますが、実際はそれよりもっと少ないのです。この数値はビタミンCを含む食品の量を調査したもので、そのビタミンCがそのまま口の中に入るわけではないからです。しかもミカンや柿がとれる11月に調査しているので、これらの果物が食べられない夏場は、半分くらいしか摂取できません。さらに加熱調理するとビタミンCが失われます。
近年食物からビタミンCがとれにくくなっています。その原因の第一は農業が大きく変わったためです。露地栽培や有機肥料が減って、ハウスものになったことでビタミンCの含有量が減少しています。
それに品種も変わっています。例えばキュウリはかつて曲がっていて、濃い緑色でしたが、最近は流通経路に合うようにまっすぐなキュウリが好まれ、色も薄くなっています。
白菜、キャベツなども収穫したその日に食べればビタミンCの含有量は多いのですが、最近は遠くから運ばれて、収穫から食卓にのぼるまで時間がかかっています。
さらに食生活の変化で加工食品が増えていることが影響しています。加工食品にはビタミンCはほとんど含まれていません。
食物から十分摂取できない場合はサプリメントでとることもできます。食物でもサプリメントでもビタミンCの効果は変わりません。かつて栄養士は、サプリメントはやめなさいと指導していましたが、最近はサプリメントをどう上手にとり入れるかを教えていただけます。
ビタミンCは水溶性のビタミンですが一定量は吸収され、貯蔵されます。人間は体内でビタミンCを作ることができません。イヌやネコなどの多くの動物は自分で作っています。従って、食物とサプリメントの両方で栄養所要量以上に摂取しても問題ありません。
ビタミンCは約40の働きを持っていて、それがフルに働くと数多くの病気の予防に効果があります。ストレスや飲酒、加齢などによって、体内のビタミンCは減少します。生活習慣病の予防にはビタミンCを適度に摂取することが重要なのです。
◆パネルディスカッション
南 日本人は一生懸命働き、貯金をしてきましたが、経済に熱心になると生活習慣病になりやすい。これからは自分の体は自分でつくるという考え方で、健康寿命を延ばし、充実した人生を送ることが目的です。それには免疫力を上げることが必要ですね。
村田 人間には本来免疫力が備わっていますが、現代社会のなかで免疫力はかなり落ちています。ビタミンCは体の免疫力を高めることに貢献できます。レバーなどに含まれるビタミンAも免疫力を高めます。現代人の多くは潜在的なビタミン欠乏症になっています。基本は野菜、果物からの摂取ですが、サプリメントや総合ビタミン剤でそれを補うことも大切です。ただビタミンCは加熱調理で減るので、量をたくさん食べることが大切です。油炒め、電子レンジの加熱はさほど減りません。ビタミンCはシミ、ソバカスなど美容にも効果がありますが、この場合、食物からの摂取に加え、クリームなど皮膚浸透型もいいと思います。
田口 体温が低いと活性酸素の発生が少ないので、長生きにはプラスです。女性の方が長生きするのは、基礎代謝が低く男性より体温が低いのもその理由の一つです。従って、むやみに体温は上げないほうがいいと思います。冬眠状態が本当は理想です。免疫力と体温もあまり関係ありません。食生活でいえば、野菜、果物は色の濃いものが抗酸化力が高いといえます。健康食品を選ぶ場合は、宣伝などにあまり惑わされないでほしいです。マラソンや水泳など激しい運動は活性酸素をたくさんつくることになるので、健康には逆効果です。ウオーキングやラジオ体操程度の運動を続けることが望ましいと思います。毎日新聞
このページの先頭に戻る