名張・百合が丘小、給食民営化でトラブル相次ぐ /伊賀(10/05)
◇ビニール片の混入、試食しないままの配膳……目立つ不慣れな仕事ぶり
◇保護者、窓から調理チェック−−衛生管理不安視「万全期してほしかった」
給食作りの一部が民間委託された名張市立百合が丘小学校(山本美一校長、児童数548人)で9月、ビニール片が給食に混ざったり、校長が試食しないまま児童に配膳されるといったトラブルが相次いだ。8月下旬に2度あった試食会でも、保護者から衛生管理を不安視する声が上がっており、保護者らが連日、給食室の窓から調理員の作業をチェックする事態になっている。トラブルはなぜ起こったのか−−。背景を探ってみた。【上野宏人】
◇人件費削減
市立小学校の給食作りの一部民営化は03年3月、名張市が厳しい財政状況に陥っているため、行財政改革の指針「市政一新プログラム」に位置付けられた。名張市教委は04年4月、モデル校に市立百合が丘小学校を選び、6月には民間委託に関する基本方針も示した。
民間委託の目的は人件費削減によるコスト削減だ。市教委は来年7月末までの1年間、民間に百合が丘小での調理などを約1200万円で委託。これまで1学期までの人件費は正職員2人、臨時職員1人、退職した職員の再任用1人の計4人で約1800万円。「約600万円が削減できる」と説明する。
しかし、実際には2学期以降、正職員2人は他校に移り、臨時職員は委託業者に就職したため、立場は変わったがこれまでと同じように百合が丘小で調理を続けている。再任用職員は、民間委託に合わせ7月31日付で計4人(他校も含む)が退職したが、4人の年間給与は計約910万円。今回の民間委託だけを見れば「コストは高くついている」(市教委)という。市教委は「今後、正職員の退職者を補充せず、順次民間委託を進めれば、長期的にはコスト縮減になる」と話す。
市教委は民間委託の意義について、民間活力の導入も挙げる。しかし、名張市職員労働組合の我山博章執行委員長は「民間活力導入には具体性がない。おそらく唯一の目的の経費節減が達成されるかどうかは、これから見ていかなければならない。民間委託をしない場合の経費節減も考えるべきとの議論もある」と話す。
◇訓練不足
委託する業者は、指名型プロポーザル方式で選定。参加した3社の中から、全国的に給食業務を展開する市外業者と市内業者のJV(共同企業体)に決定し、8月2日に契約を交わした。JVの委託は全国初で、市教委は「今後の民営化を見据えた市内企業の育成」を理由に挙げる。
市外業者は、百合が丘小のような自校方式の給食を、名古屋市や大阪府などで10年以上続けている実績がある。同社は昨年度から藤原町(現いなべ市)で小中学校などの給食をセンター方式で実施しているが、自校方式は名張市が初めて。
市教委や業者によると、契約後、2学期からの給食に備え、夏休み中に、1学期までの調理員から器具の取り扱いや作業の流れなどを引き継いだ。お盆過ぎからは、業者は器具の焼き具合や揚げ具合をなどをチェックするため3回ほど調理。しかし、本番通り児童数分の590食を初めて作ったのは8月25日と同29日、保護者を招いての試食会だった。
不慣れな仕事ぶりが目立ち、保護者から衛生面で不安視する声などが挙がった。その後、9月中旬には給食に1・5センチ角のビニール片が混入するなどのトラブルが相次いで起きてしまった。
給食は毎回、メニューが変わるため、調理の流れもその度に異なるという難しさがある。業者は「調理員個々の能力に問題はない。作業を全体として集約する点が至らなかった」という。その理由について、業者はJVによる影響は強く否定し、「初顔合わせの5人の調理員が十分に訓練する時間が短かった。それぞれが自分の仕事に集中してしまい、全体を見る目も足りなかった」と反省する。
給食室の外には、母親ら保護者10人前後が毎日のように窓越しで調理をチェックしている。ある母親は「民間委託するのなら、せめて万全を期してほしかった。子どもは給食を拒否できない。百合が丘小は実験台ではない」と改善を強く求めた。
◇信頼回復
トラブル発生後、業者は同小運動会で代休日となった9月27日、自主訓練した。同28日の給食を再スタートと位置付け、全体を統括する職員「管理指導者」1人を常駐させた。また、百合が丘小での調理経験があり、今回、市外業者が採用した副主任の職員を主任にするなどの対応もとった。
業者は「ミーティングで調理員の意思疎通を図りながら、早く保護者らから信頼いただけるよう努力したい。自校方式を受注した民間のさきがけとしての責任は重大に受け止めている」と話し、信頼回復に全力を尽くしている。
一方、市教委は、試食会後、百合が丘小からの要請を受け、給食室内に手洗い場を1カ所増設。手洗い場を計2カ所にして、調理の作業効率のアップを図った。
また、「モデル校評価委員会」を11月に設立。百合が丘小以外の校長や、保護者代表、学校栄養職員、有識者ら10人前後を委員として、同小の実態を踏まえて、民間委託の導入や訓練のあり方などについて評価、検証してもらう。
安全でおいしい給食を子どもたちに食べてもらう−−。この当たり前のことを、トラブルなく毎日継続していくことが、唯一の信頼回復の道なのだろう。毎日新聞
このページの先頭に戻る