暮らしWORLD:食材の世界は赤、黒を横目に販路拡大(7/29)
◇赤豚/アセロラ/赤軸ほうれん草
食材の世界に「赤」の時代が訪れている。黒豚、黒ごま、黒酢など、味や健康志向から「黒」の食材に注目が集まる中、着々と販路を広げている赤い食べ物の魅力とは。【三角真理】
●霜降りで軟らか
「赤豚」が人気メニューになっている店が東京都内にある。自然食レストラン「六素(ろっそ)」(千代田区麹町1)。小島(こじま)国治(くにはる)店長が、調理前の赤豚の薄切り肉を見せてくれた。普通の豚肉との違いは? 「霜降りで軟らかいんです」という説明に目を凝らすと、赤身部分にあんばいよく脂が乗っている。
正式名は「伊達(だて)の純粋赤豚」で、宮城県迫(はさま)町の食肉販売「伊豆沼(いずぬま)農産」が売り出している。同県が品種改良を重ね、02年に誕生したブランド豚「しもふりレッド」を純粋交配。毛の色が赤茶色のためにその名がついた。同県畜産試験場原種豚(げんしゅとん)チームの上席主任研究員、鹿野裕志(かのひろし)さんによると、しもふりレッドの肉の特徴は▽霜降りなので口溶けがよく軟らかい▽ほのかなピンク色で食欲をそそる▽コレステロール値を下げる効果があるといわれるオレイン酸が普通の豚肉より豊富−−。「ただし、脂肪は普通の豚ロースの2〜3%に対し、約5%とやや多い」と付け加えた。
伊豆沼農産では現在、8軒の養豚農家に生産を委託している。昨年6月の販売開始当初は、月約1・5トンの販売量だったが、そのおいしさが口コミで広まり、現在は月約6トンを11都府県に出荷している。最大の特徴である肉の軟らかさを守るため、出荷前には全頭の肉を試食チェック。硬い場合は加工品用に回すなど品質を徹底管理する。総務担当の阿部(あべ)孝敏(たかとし)さん(50)は「黒豚ブランドが人気を集める市場に割って入るには、相当な努力が必要です」。
さて、その味は−−。冒頭の「六素」で、しゃぶしゃぶを用意してもらった。薄切り肉をさっとお湯に通して一口。なるほど、軟らかい。肉臭さもないが、人気の秘密はこの軟らかさだと思った。ランチタイムのしょうが焼きセット(1000円)は、昨夏の約5倍の1日約50食が出る売れ筋メニューという。
●ピンクから真っ赤へ
赤い食べ物の王様といえばトマトだろう。
ジュースやケチャップなどの老舗メーカー「カゴメ」が出している生食用トマト「こくみ」は99年の発売以来、好調に売り上げを伸ばしている。人気のカギを握っているのは、その「赤い色」だという。
同社によると、トマトの赤はリコピンという色素で、体内で生活習慣病や老化の原因になる活性酸素を消す抗酸化作用や美白作用がある。「こくみ」は、このリコピンを通常の2〜3倍含む真っ赤なトマトだ。ケチャップ用に真っ赤なトマトを作ってきたノウハウを活用して独自開発した。同社広報部の浦野文孝(うらのふみたか)さんは「消費者のトマトのし好は、ピンク系から赤色に移りつつあります。真っ赤なトマトはこくとうまみがあり、リコピンの効用も広く知られるようになりました」。現在は全国約40の農家が契約栽培しており、今年度の目標売上高は00年の10倍以上の約40億円という。
日本人1人のトマトの消費量は年間約9キロ。それでもギリシャ人の約15分の1で、浦野さんは「トマト料理のレシピを広めるなどすれば、真っ赤なトマトが日本の食卓にまだまだ広がるはず」と話した。
ビタミンCがレモン果汁の約34倍という南国の果物アセロラ。カリブ海の島々が原産で、高さ2〜3メートルの木に直径2〜3センチの真っ赤な実を1年に4、5回つける。日本では食品メーカー「ニチレイ」が84年から、ブラジル産をジャムやゼリーとして商品化し、87年からはジュースも販売。「販売当初は果物の一つであることを知ってもらうのに苦労しました」(同社)という果物だが、この赤い食材もちょっとしたブームだ。
●南国の果実
国内で唯一本格的に栽培している沖縄県本部(もとぶ)町は「生のアセロラを食べられる町」として知名度上昇中。90年に初出荷して以来、現在は町内で17軒の農家が生産している。5〜10月ごろの収穫期にはアセロラ狩りが体験でき、夏休み中は全国から毎日4、5組が訪れているという。
同町でアセロラを加工・販売している「アセロラフレッシュ」の並里哲子(なみさとてつこ)さんがその味を伝えてくれる。「甘酸っぱいんですよ。『グミみたい』とおっしゃる方も多いですね」。生産高は毎年増えており、今年は12トンの見込みだが、並里さんは「それでも需要に間に合いません」とうれしい悲鳴だ。
緑の葉菜類にも「赤」志向が及んでいる。京野菜を販売する「川政(かわまさ)」(京都市中京区)では3年前から、茎部分が赤い大根のまびきな「静(しず)むらさき」を販売。全国の京料理店などから注文が相次ぎ、「入荷待ち」になることが多いという。同社の野川敏之(のがわとしゆき)専務は人気の秘密を「気品のある赤なので、お揚げと炊いたり、小鉢ものにあてがって色を強調させてるのとちゃいますか」とみている。
一方「赤軸ほうれん草」を作るのは、埼玉県八潮(やしお)市の三ケ島(みかしま)農園。文字通り、軸の部分が赤いほうれん草で、同農園の三ケ島修一(しゅういち)さん(53)は「イタリア料理などに合いそうでしょ。近くの農園の人も『こういうの作り始めたら面白くなるんじゃないですか』ってね」。イタリア料理店からの注文は順調。お浸しにしてみると赤と緑の色のコンビネーションが絶妙だった。
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