食の安全確保、どうなる 「食品衛生法」改正案が来年の国会提出へ(12/11)
国民の食の安全を守る食品衛生法の改正作業が進んでいます。厚生労働省は来年の通常国会に改正案を提出しようと11月に「骨子案」を公表。東京と大阪で開いた消費者との意見交換会などを踏まえ、2月提出を目指して細部を検討しています。牛海綿状脳症(BSE)など相次いだ食をめぐる事件で揺らいでいる安全確保の仕組みはどう変わるのか、整理しました。
●現実に対応した内容に <目的>
・「食品の安全を確保することにより、国民の健康の保護を図る」を目的に
・国、地方自治体、事業者の責務を明記
食品衛生法は戦後間もない47年に制定された。食品や添加物の規格、基準、表示、行政の監視、輸入手続き、営業許可などを定めている。「衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与する」というのが法の目的だ。
制定当時は、不衛生で直接健康被害がある食品の取り締まりが重視された。その後、食品生産技術の進歩などで食の安全をめぐる環境は大きく変わった。遺伝子組み換え食品が登場、BSEや化学物質による長期的な健康影響など新たな問題が次々と起こり、「今の食品衛生法では時代に対応しきれていない」との批判が上がった。
消費者団体などは法律が個々の消費者の健康を守ることを明記していないことや、行政の裁量を認める記述が多い点を問題視してきた。「現行法で対応できる」と慎重だった厚労省も食に対する不信の高まりを受け、目的自体を変える方針を打ち出した。
骨子案では、目的に国が国民の健康を守る責任があることを明示。国や都道府県に、国民から意見を聞いて政策に反映させることを求めている。一方、事業者には自主的に安全確保に努め、行政に協力するよう定めた。
改正を訴えてきた日本生活協同組合連合会は骨子案を大筋で評価しながらも、行政の説明責任や消費者の意向をくみ上げる具体的な仕組みを盛り込むよう求めている。
●農薬の規制、より厳しく <規制強化>
・基準ない農薬残留食品も流通禁止に
・安全性が疑われる健康食品の流通差し止め可能に
・問題が判明した天然添加物は使用禁止
BSEでは、生産する段階の規制と流通する段階の規制が連携していないことが問題になった。農薬についても、農水省が国内流通を認めて登録する際、厚労省が食品中の残留基準を定めるシステムになっていないため、残留基準がない農薬が出回る状態が続いてきた。食用農産物用の農薬は世界で約700種類。国内で登録されているのは約350種類。このうち残留基準があるのは229種類だ。
改正では、基準がない農薬が残留した食品の流通を06年をめどに原則禁止する。そのうえで、06年までの3年間で約200種類の農薬の暫定基準作りを急ぎ、新しい農薬が出た場合は残留基準を設けてから登録する仕組みにする。動物用医薬品、飼料添加物も同様だ。
中国製「やせ薬」で問題になった健康食品については、専門家の審議をへて健康被害の原因物質が特定できなくても流通を禁止できるようにする。
現在は、薬効を表示したり、医薬品成分が含まれていたりすることを理由に薬事法で取り締まるのが中心。だが、何が含まれているかわからない錠剤などの成分を分析するのは技術的に難しく、対応の遅れが指摘されていた。成分がわかっていてとりすぎると健康に影響するおそれがある場合も同様に規制する。
天然添加物は、毒性試験などで安全性が疑われたり、使われなくなったりしたものを使用可能リストから削除できるようにする。95年の改正で、天然添加物も合成添加物同様の安全性審査を受ける仕組みになったが、当時使われていたとされる489品目は、例外的に使用可能になっていた。
●「形骸化した指導」改善 <監視体制>
・都道府県が監視計画策定
・総合衛生管理製造過程(HACCP)制度を更新制に
・食品衛生管理者の権限を強化
都道府県などの食品衛生監視員が飲食店や製造施設に立ち入る監視指導は、年12回を最高に業種ごとの回数を57年から全国一律に政令で定めている。しかし、法定回数に対して実際に監視した回数の割合は年々下がり、00年度で13・6%にまで低下している。形骸(けいがい)化の背景には回数の設定が実情に合わなくなっていることに加え、監視対象施設の増加や職員の不足などが指摘されている。違法な香料の製造が発覚した協和香料化学茨城工場の場合も、法定回数は年6回なのに茨城県は2年以上立ち入りをしていなかった。
このため、都道府県が実情に応じて毎年「監視指導計画」を定める方式に変更。問題が起きた時に影響が大きい大規模施設に重点を置くなど、柔軟で効率的な監視ができるようにする。
しかし、「都道府県に任せると財政難で監視が後退するのでは」との意見もあり、監視の質を保つ仕組みをどう作るかが課題だ。
一方で、事業者の自主管理も促す。
HACCPは、厚労省が高度な衛生管理をしている工場を承認し、商品に表示できる制度。00年に集団食中毒事件を起こした雪印乳業大阪工場も承認施設だったことで制度の不備が指摘された。このため、承認した後も3年程度で再審査する方式に改める。
さらに、工場などに置く専門職の食品衛生管理者の意見を経営者が尊重するよう法律に明記し、安全軽視の経営にならないよう歯止めをかける。生産流通過程をたどることができるトレーサビリティーを確保するため、仕入れ元の記録保管も求めるが、「すべての事業者に義務化するのは無理」として努力規定にとどまった。
○基本法も提出へ、表示の見直しも
BSEの反省を踏まえ、新設される食品安全委員会と各省にまたがる食品行政全般について定める食品安全基本法(仮称)も来年の通常国会に提案される。国民の健康の保護などを基本理念に、行政と事業者の責務、消費者が果たす役割を盛り込む方向で検討している。一方、食品衛生法や農水省所管のJAS(日本農林規格)法に基づく食品表示制度の見直しも課題として残っている。表示内容の見直しは法改正が不要で、両省の審議会が賞味期限と品質保持期限に分かれている用語の統一などを検討している。
表示違反の罰金最高額は7月施行の改正JAS法で50万円から1億円(法人)に上がっており、食品衛生法の罰金も引き上げられる。(朝日新聞)
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