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ESBLとは、細菌感染症を起こした入院患者さんなどの治療のために多く使われている抗生物質「第3世代のセフェム薬」を分解して効かなくしてしまう特殊な酵素です。本来はペニシリンのみを分解し「ペニシリナーゼ」と呼ばれていた酵素が突然変異し、ペニシリンからセフェム薬まで広い範囲の抗生物質を分解する能力を獲得するようになったため、Extended-spectrum β-lactamaseの頭文字に因んで「ESBL」と呼ばれています。
ESBLは、1980年代の前半にヨーロッパにおいて、「第3世代セフェム薬」に耐性を獲得した肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)から最初に発見されました。
現在、欧米や一部の発展途上国では、ESBLを産生することにより、病院でよく使われている第3世代セフェム薬が効かない耐性菌が増加し、深刻な問題になっています。
我が国でも、第3世代セフェム薬に耐性を示す肺炎桿菌などがこれまでしばしば分離されていましたが、欧米で問題となっているのと同じ型のESBLは、今まで確認されていませんでした。
しかし、最近、我が国にもSHV-5aと呼ばれるESBLを産生する肺炎桿菌が存在することが、遺伝子の解析の結果確認されました。
◆なぜESBLが問題なのか?
肺炎桿菌や大腸菌などのグループの細菌(グラム陰性桿菌)は、エンドトキシンという強力な毒素などを産生するため、肺炎や敗血症などを起こすと血圧が急に下がり、ショックや多臓器不全などで死亡する事があります。したがって、ESBL産生菌による感染症にかかった場合、常識では効くはずの抗生物質が効かないため、有効な抗菌薬による治療法に切り替えないと死亡するなどの危険性があります。すなわち、ESBL産生菌の臨床的な危険性は、最近問題となっているバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などより、ある意味では高いと考えられています。
◆どうしたらいいの?
たとえ入院中の患者さんでも、感染防御能力の正常な人では、この菌が便や尿などから見つかっても病気(感染症)を起こすことはありません。
また、ESBL産生菌に対しては、効果が期待できる抗菌薬がありますので、過度に恐れる必要はありません。
大切なことは、ESBL産生菌による感染症であることに早期に気付き、適切な抗菌薬による治療に遅滞なく切り換えることです。
ESBL産生菌の感染が問題となるのは、細菌に対する抵抗力が弱っている白血病などの血液疾患や癌などの手術後の患者さん、未熟児、慢性の呼吸器疾患などで長期間入院している高齢の患者さんなどの中で、肺炎や敗血症などの細菌感染症を発症し、治療のため「第三世代セフェム薬」の投与を受けている方々です。
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